ヴェネチアンガラス・土田康彦、その素顔に迫る
美しき水の都ヴェネチアで約1000年に渡り受け継がれてきたヴェネチアンガラス。ガラス加工で世界の頂点を極めたと言われ、その自由奔放なフォルム、舞い上がるような軽やかさ、精緻で華麗な美しさをたたえた姿は、幻想的な小宇宙と呼んでも過言ではない。そんな熟練のガラス職人だけが集うムラーノ島に、唯一スタジオを構える日本人がいる。彼の名前は土田康彦 ── 多様な色彩と高い装飾性で知られるイタリアの伝統的なガラス工芸に、独自の哲学と日本の美を吹き込んだ作品で世界中から注目を浴びている。本作はその作品と創作の秘密を8年間に渡って記録した。
太陽と美食の国、イタリア。アートと食をつなぐ者
ガラス作家である土田は一流の料理家でもある。大阪の辻調理師専門学校を卒業し、ヴェネチアの名店「ハリーズ・バー」で調理師として働いた経歴を持つ。自らがつくった美しいガラス食器に、シンプルだが丁寧に料理が盛り付けられていく様は一つのアート作品と言えるだろう。フェンシング選手、映像作家、ミュージシャン、さまざまな悩みや葛藤を持った来訪者を、温かい食事と柔らかい物腰で包んでいく。タイトルの「マゴーネ(Magone)」は北イタリアの方言で「夕日を見る時の胸を締めつけられるような感覚」を意味するが、土田は諺にある“袖振り合うも多生の縁”とも繋がる感覚だと語る。偶然が運ぶ縁を創作に活かす土田の人生観も共感を誘う。
国際映画祭出品・受賞状況
● 第 40 回モントリオール国際芸術映画祭 2022(カナダ)公式出品
※同映画祭ヨーロッパツアーで 2022.10.9 イタリア・ヴェネチアのパッラッツォ・グラッシ劇場でも上映
● ブカレスト・フィルム・アワード 2022(ルーマニア)サウンドトラック部門公式出品
● スノーダンス・インディペンデント映画祭 2022(ドイツ)公式出品/コンペティション部門ノミネート
● アート・ノンストップ・フェスティバル /BA2021-International Film & Art Festival(アルゼンチン)公式出品
【受賞:最優秀初監督作品賞/最優秀初監督賞/映画にインスピレーションを与えたアーティストへの特別賞】
● FICIMAD 2021 マドリード国際インディペンデント映画祭(スペイン)公式出品
【受賞:長編部門最優秀ドキュメンタリー監督賞】
● 国際サウンド&フィルムミュージックフェスティバル 2021(クロアチア)公式出品
● マインドフィールド映画祭アルバカーキ(アメリカ)2021・7-8 月期 公式出品
【受賞:長編ドキュメンタリー部門プラチナ賞】
● 4th ディメンション・インディペンデント映画祭(インドネシア)2021・8 月期ドキュメンタリー部門公式出品【ファイナリスト】
● トロント・インディペンデント映画祭 of CIFT(カナダ)2021・7 月期ドキュメンタリー部門公式出品【ファイナリスト】
● ブラックボード国際映画祭(インド)2021・7 月期 公式出品
監督兼語り手である田邊アツシは、土田康彦の著書『運命の交差点』に触発され、ヴェネチアに長く住むこの異色のガラス作家に会いに行き、8 年間、彼の姿 を追い続けました。映画は 7 つの章に分かれており、其々が土田の人生と創作に関する様々な要素を紹介しています。章が進むにつれて観客は、土田と「マゴーネ」 という言葉の秘密を知ることになります。
【Cast】
土田康彦
ヴェネチア・ムラーノ島にスタジオを構える唯一の日本人アーティスト。作風は多様であるが、特筆すべきは強いメッセージやコンセプト、哲学が各作品の根底に一貫して存在している点である。その作風より「ガラスの詩人」の異名をもつ。近年、執筆、食、建築、映画、ファッション、音楽などジャンルを超えた活動を展開し、各分野の作家とのコラボレーションが注目されている。2015年に作品集『運命の交差点』を出版。フジサンケイビジネスアイ賞・金賞をダブル受賞する。同年のミラノ万博では、書家・紫舟氏の書をガラスで造形した彫刻作品を発表。2016年のヴェネチア・ビエンナーレ国際建築展では、403architecture [dajiba]の『ガラスの橋』に制作協力。それぞれ最優秀金賞と審査員特別賞を受賞する。2016年放送のNHK『SWITCH インタビュー達人達』では、パティシエ小山進氏との対談が大きな反響を呼んだ。2019年には日展に入選し、2021年に処女作となる青春群像小説『辻調鮨科』が祥伝社より出版された。2023年5月、日本橋三越本店にて大規模な集大成展を開催され、2作目の小説『神戸みなと食堂』が托口出版より出版される。
宮脇花綸
フェンシング(フルーレ)選手。5歳からフェンシングを始め、以降、国内外の数々の大会で優勝及び優秀な成績を納め、高校時代よりナショナルチーム入りし 現在も日本代表選手として活躍中である。オリンピックフェンシング競技メダリストである太田雄貴氏を介して土田と知り合い、2016年イタリアでのフェンシング武者修行の為、土田家に滞在した事が『マゴーネ』出演へのきっかけとなった。
臺 佳彦
映画監督、プロデューサー、クリエイティブディレクター。広告代理店在職中からCM制作・演出に携わり、ドラゴンクエストシリーズのCMなども手がける。独立後に制作したオリジナルアニメーション作品『The World of GOLDEN EGGS』は大反響を巻き起こした。また、パペットアニメーションと実写を融合させた異色の脚本・監督作『Present For You』(2015年公開・オダギリジョー主演)は、釜山国際映画祭をはじめとする国際映画祭で高い評価をけ、ロサンゼルスのワーナー・ブラザース・スタジオで開催されたInternational 3D & Advanced Imaging Society Creative Arts Awards 受賞。
403 architecture[dajiba]
2011年に三人の建築家、彌田徹、辻琢磨、橋本健史によって設立された建築設計事務所。現在はそれぞれが個人事務所を主宰しながら、浜松という都市に建築的思考と実践でアプローチするコレクティブとして、活動を継続している。吉岡賞(2014)、ヴェネツィア・ビエンナーレ国際建築展日本館にて審査員特別表彰(2016)を受賞。
大友香里
医学博士 順天堂大学卒業 順天堂大学大学院卒業
ハーバード大学スケペンス研究所博士研究員(2008~2011年)
免疫療法、ホルモン補充、幹細胞治療に最新のテクノロジーを組み合わせた幹細胞培養治療を得意とする。培養加工についても造詣が深い。
TERU
ロックバンド GLAYのヴォーカリスト。
昨今ではGLAYのシングル楽曲を数多く手がけているが、各アーティストからの依頼により、楽曲提供やプロデュースなども精力的に行っている。
また、音楽活動の他、エイズ予防キャンペーンの一環のレッドリボンライブへの長年のレギュラー出演や、ホワイトバンドプロジェクトへの参加、東日本大震災・熊本地震の復興支援活動などにも力を注いでいる。
【Staff】
監督・脚本・撮影・編集: 田邊アツシ
映像作家。自らのカメラによるアーティストのドキュメンテーション、美術館・博物館・文学館等の展示映像を主軸に、TVCM、企業等のVP、ミュージックビデオの企画制作も多数手掛ける。
長編映画初監督作となる『マゴーネ 土田康彦「運命の交差点」についての研究』においても撮影に加え、編集、脚本、ナレーションまでこなし、従来のドキュメンタリーともフィクシィンとも異なる表現、映画・文学・美術の境界を超えて「私」を見つけるひとつの試みに挑戦した。
私は人、自然、自己との対話の中にヒントを見い出しながら創作活動をしています。私は主に「ノンフィクション映画(ドキュメンタリーよりも監督のフィルターや考察、作家性を強く全面に出した映画)」と定義づけた作品制作を通して、誰もが漠然と、または薄々気付いている普遍的な事柄を作品に具現化して示すことを自らの使命と考えています。映画『マゴーネ』では、私の、土田氏との出逢いによって得られた自らの人間としての成長体験を、作品を通して観賞してくださる皆さんと共有したいとの思いを込めています。作家が希望に満ちた心象を作品に込めることが、良き未来の想像&創造にとって大変重要だと考えています。
『マゴーネ』は世界各国の映画祭で評価をいただきました。言葉や文化の違いを超えて、作品を理解してもらえることに、驚きと喜びを感じています。
この映画をもっと多くの人に観ていただきたいと願っています。
『マゴーネ』監督・田邊アツシ
プロデューサー: 杉本理恵子
国内外で活躍する作家と、企業や地域のブランドコラボを実現するプロデューサー。
2012年に土田康彦と監督・田邊アツシを引き合わせた張本人。自身が代表を務めるブランディング会社「えすぷらん」初の映画事業として『マゴーネ』の配給を手がける。
音楽:小久保 隆
携帯電話緊急地震速報のアラーム音や、電子マネー「iD」のサイン音、ドコモのメロディコール初期楽曲などで知られる環境音楽家。小久保の楽曲も収録の、アメリカのコンピレーション・アルバム「KankyoOngaku:Japanese Ambient,Environmental& New Age Music1980-1990」が、2020グラミー賞(最優秀ヒストリカル・アルバム部門)にノミネートされた。
音楽:アンドレア・エスペルティ
イタリア生まれのスイス人トロンボーン奏者、作曲家。幼い頃から芸術の世界に興味を持ち、音楽のジャンルを問わず多様なアーティストとのコラボレーションを行っており、豊かで繊細な息づかいから生まれる美しい音色と、感情的な表現力が特徴である。現在は日本に住み、日本のアンビエント・ミュージックのパイオニアである小久保隆などのアーティストとコラボレーションを行っている。
エンディングテーマ曲「the other end of the globe」: GLAY
北海道出身のロックバンド。
TAKURO(Gt.)とTERU(Vo.) を中心に1988年に結成。1989年にHISASHI(Gt.)、1992年にJIRO(Ba.) が加入し現在の体制となり、1994年にメジャー・デビュー。2005年の独立以降、音楽を通してあらゆる可能性にチャレンジしていけるよう、常に独自のスタンスで高みを目指し、邁進を続けている。
コロナ禍で対面ライブが開催出来なかった期間は、いち早くオンラインアコースティックライブイベント「LIVE at HOME」の配信をしたり、「THE ENTERTAINMENT STRIKES BACK(エンターテインメントの逆襲)」と題した4ヶ月連続配信ライブを敢行するなど、制約された状況下でも止まることなくGLAYの音楽を発信し続けた。